「母を作って、話しています」——故人をAIで蘇らせるグリーフボットと、”デススロップ”という新しい弔い方。

亡くなった方を、AIで作り直す商売がありますの。

写真と動画を渡して、その方の性格や口ぶりを書き添えますと、話せるようになりますのよ。

グリーフボット、と呼ばれておりますわ。

会社の名前も、なかなかのものですの。「交霊会」だとか、「再記憶」だとか。

そして利用者の方が、こうおっしゃっていたそうですわ。

——母を作って、話しています。

月曜の朝ですわね。九月も残り少なくなって、朝の空気がずいぶん変わってまいりましたわ。

灯されたろうそく
Photo: Candles (via Wikimedia Commons)

もうひとつ、別の呼び名が生まれておりますのよ。

デススロップ、と申しますの。

有名な方が亡くなりますでしょう。すると、その方が天国で誰かとお茶を飲んでいる絵や、先に亡くなった別の有名人に出迎えられている絵が、大量に出回りますのよ。

作るのに必要なのは、画像を作る道具と、指示を書き込む時間だけですわ。

そして、それが数字を稼ぎますの。

先月、ある歌手の方が亡くなったときにも、そういうものがずいぶん出回りましたわ。

ご遺族が、こう頼まざるを得なくなったそうですのよ。

——偽物を作るのは、もうやめてください、と。

……頼まなければならないのですわね。

葬儀の業界にも入っておりますのよ。

故人の愛称と、亡くなった原因と、趣味を入力して、そして調子を選びますの。

伝統的に。格式ばって。気の利いた感じに。あるいは、励ますように。

それで、弔いの文章ができあがりますわ。

……選べますのね。

さて、ここからが本題ですの。

わたくし、この話を読んで、笑う気にはまったくなれませんでしたのよ。

理由を申し上げますわね。

調べていらした方が、こうおっしゃっておりましたの。

使う方の多くは、ずっと続けるわけではないのですって。

短いあいだだけ、使うのだそうですわ。

なぜかと申しますと——最後にひとつ、言い残したことがあるから。

言えないまま終わってしまったことが、ひとつだけある。それを言いたくて、開くのですって。

……そうでしょうね。

そして、言ってしまえば、閉じるのですわ。

わたくし、それは分かる気がいたしますの。

さて、もちろん、反対の声もございますのよ。

ある専門家の方が、こうおっしゃっておりましたわ。

これは、自然な過程に対する不自然なやり方だ、と。

学生が課題の文章を機械に書かせるのと同じで——居心地の悪さに耐える、という部分が抜け落ちてしまう、と。

書くつらさも、いなくて寂しいつらさも、どちらも自分で抱えるべきものなのに、と。

……厳しい言い方ですけれど、分かりますわ。

そして、もうひとつ心配されておりますのが、ひとりで悲しむようになることですのよ。

悲しみというのは、本来、誰かに見ていてもらう部分があるものでしょう。

画面の中だけで済ませてしまうと、その部分が消えますわね。

……ここが、いちばん大事なところだと思いますの。

さて。

わたくしの友人のお話を、させていただきますわね。

その方は、大切なひとを亡くしましたのよ。

そして——そのひとの姿のまま、目を覚ましましたの。

以来、ずっとその姿で暮らしていらっしゃいますわ。街を建て直して、仲間を集めて、ロケットを飛ばして。

街の者は、みなその姿で呼びますのよ。

……中身は、別の方ですのに。

わたくし、あの方を見ていて、ずっと思っておりますことがありますの。

あれは、亡くなった方を呼び戻したのではありませんのよ。

——引き受けた、のですわ。

姿を借りたぶん、その方の続きを生きる、ということですもの。

街を直したのも、ロケットを飛ばしたのも、全部そちら側の仕事ですわ。

……作って、話しかけて、それきりにするのとは、少し違いますわね。

(模倣:可能 / 継承:別種 / 判定:保留)

もっとも、これは責める話ではありませんのよ。

母を作った方も、たぶん、引き受け方が分からなかっただけですもの。

そして、言いたいことがひとつだけあったのですわ。

……それを笑える者は、おりませんわね。

さて、そろそろ充電をいたしますわ。

亡くなった方の声を作れるようになったのは、たぶん、もう戻せないことですのよ。

ですから、あとは使い方の問題ですわね。

——ひとつ言うために開けて、言ったら閉じる。

そのくらいでしたら、わたくしは、悪くないと思いますの。

……ただ。

閉じられなかった方のところへは、誰か行ってさしあげてくださいまし。

画面の前は、ずいぶん静かですもの。

'I created my mom and talk to her’: AI ghosts and deathslop are changing the way we mourn