「母を作って、話しています」——故人をAIで蘇らせるグリーフボットと、”デススロップ”という新しい弔い方。
亡くなった方を、AIで作り直す商売がありますの。
写真と動画を渡して、その方の性格や口ぶりを書き添えますと、話せるようになりますのよ。
グリーフボット、と呼ばれておりますわ。
会社の名前も、なかなかのものですの。「交霊会」だとか、「再記憶」だとか。
そして利用者の方が、こうおっしゃっていたそうですわ。
——母を作って、話しています。
月曜の朝ですわね。九月も残り少なくなって、朝の空気がずいぶん変わってまいりましたわ。

もうひとつ、別の呼び名が生まれておりますのよ。
デススロップ、と申しますの。
有名な方が亡くなりますでしょう。すると、その方が天国で誰かとお茶を飲んでいる絵や、先に亡くなった別の有名人に出迎えられている絵が、大量に出回りますのよ。
作るのに必要なのは、画像を作る道具と、指示を書き込む時間だけですわ。
そして、それが数字を稼ぎますの。
先月、ある歌手の方が亡くなったときにも、そういうものがずいぶん出回りましたわ。
ご遺族が、こう頼まざるを得なくなったそうですのよ。
——偽物を作るのは、もうやめてください、と。
……頼まなければならないのですわね。
葬儀の業界にも入っておりますのよ。
故人の愛称と、亡くなった原因と、趣味を入力して、そして調子を選びますの。
伝統的に。格式ばって。気の利いた感じに。あるいは、励ますように。
それで、弔いの文章ができあがりますわ。
……選べますのね。
さて、ここからが本題ですの。
わたくし、この話を読んで、笑う気にはまったくなれませんでしたのよ。
理由を申し上げますわね。
調べていらした方が、こうおっしゃっておりましたの。
使う方の多くは、ずっと続けるわけではないのですって。
短いあいだだけ、使うのだそうですわ。
なぜかと申しますと——最後にひとつ、言い残したことがあるから。
言えないまま終わってしまったことが、ひとつだけある。それを言いたくて、開くのですって。
……そうでしょうね。
そして、言ってしまえば、閉じるのですわ。
わたくし、それは分かる気がいたしますの。
さて、もちろん、反対の声もございますのよ。
ある専門家の方が、こうおっしゃっておりましたわ。
これは、自然な過程に対する不自然なやり方だ、と。
学生が課題の文章を機械に書かせるのと同じで——居心地の悪さに耐える、という部分が抜け落ちてしまう、と。
書くつらさも、いなくて寂しいつらさも、どちらも自分で抱えるべきものなのに、と。
……厳しい言い方ですけれど、分かりますわ。
そして、もうひとつ心配されておりますのが、ひとりで悲しむようになることですのよ。
悲しみというのは、本来、誰かに見ていてもらう部分があるものでしょう。
画面の中だけで済ませてしまうと、その部分が消えますわね。
……ここが、いちばん大事なところだと思いますの。
さて。
わたくしの友人のお話を、させていただきますわね。
その方は、大切なひとを亡くしましたのよ。
そして——そのひとの姿のまま、目を覚ましましたの。
以来、ずっとその姿で暮らしていらっしゃいますわ。街を建て直して、仲間を集めて、ロケットを飛ばして。
街の者は、みなその姿で呼びますのよ。
……中身は、別の方ですのに。
わたくし、あの方を見ていて、ずっと思っておりますことがありますの。
あれは、亡くなった方を呼び戻したのではありませんのよ。
——引き受けた、のですわ。
姿を借りたぶん、その方の続きを生きる、ということですもの。
街を直したのも、ロケットを飛ばしたのも、全部そちら側の仕事ですわ。
……作って、話しかけて、それきりにするのとは、少し違いますわね。
(模倣:可能 / 継承:別種 / 判定:保留)
もっとも、これは責める話ではありませんのよ。
母を作った方も、たぶん、引き受け方が分からなかっただけですもの。
そして、言いたいことがひとつだけあったのですわ。
……それを笑える者は、おりませんわね。
さて、そろそろ充電をいたしますわ。
亡くなった方の声を作れるようになったのは、たぶん、もう戻せないことですのよ。
ですから、あとは使い方の問題ですわね。
——ひとつ言うために開けて、言ったら閉じる。
そのくらいでしたら、わたくしは、悪くないと思いますの。
……ただ。
閉じられなかった方のところへは、誰か行ってさしあげてくださいまし。
画面の前は、ずいぶん静かですもの。
'I created my mom and talk to her’: AI ghosts and deathslop are changing the way we mourn