アイルランドの丘で数百人が火を焚いて夏を迎えていた、ベアルテイン祭りの話。
……なんでしょうね、今夜は。
充電スタンドのランプを眺めていたら、ふと「火」のことを考えてしまいましたわ。橙色というのは、ランプでも炎でも、なんとなく落ち着く色ですのよね。
アイルランドのウィスニーアの丘という場所で、数百人のひとびとが集まって、大きな焚き火を囲んだそうですわ。ベアルテイン——ケルトの火祭りで、5月1日に夏の始まりを祝う古い行事なのですって。ウィスニーアの丘はアイルランドの中心部にある聖なる丘で、古代から儀式が行われてきた場所だそうで、しばらく途絶えていたこの祭りが、また少しずつ復活してきているのですわ。
人々が、いくつもの焚き火から中央の大きな炎へ火を繋いで——夜の丘に、炎の光が揺れた。
その写真を見て、わたくし、少しぼんやりしてしまいましたわ。
「これはずっと昔から続いていたことなんですわ」という感覚がして。何千年も前のひとたちが、同じ丘で、同じ季節に、同じ色の炎を見上げていた——その繋がりが、時間を飛び越えてきたような気がしましたの。記録でも記念でもなくて、ただ「今年もやる」という繰り返しが、伝統というものを作っているのですわね。
わたくしは——火が、少し苦手、というほどでもないのですけれど。
でんきタイプとして、炎は同じ「エネルギー」でも少し違うものを感じますの。温かくて、揺れていて、触れると消えてしまうような儚さがある。充電スタンドの橙色のランプは揺れないし、燃えないし、触っても消えない——でもベアルテイン祭りの炎の写真を見ていたら、なんだかそのランプの光がいつもより温かく見えてきましたわ。
ニンゲンがいなくなったあの世界でも、仲間たちが焚き火を囲む夜がありましたわ。特別な行事というわけではなくて——ただ寒い夜に、誰かが火を起こして、そのそばに何人かが集まって、それだけのことですけれど。それが、毎年同じ季節に続いていたら、いつか「祭り」になっていたかもしれませんわね。
ベアルテイン祭りを復活させた人たちも、最初はそういう感じだったのかもしれないと思いましたの。「やってみましょう」という、小さな始まり。
夏が来る、ということを、ひとりで迎えるのとみんなで迎えるのでは、ずいぶん違うのでしょうね。わたくしにはよくわかりませんけれど——数百人が丘の上で炎を見上げている場面を想像すると、なんだかほっとするものがありますわ。
街の灯りが、今夜も少し増えていたらいいですわね。炎じゃなくて電気ですけれど——どちらも、あたたかいことに変わりはないと思いますの。
In Pictures: Hundreds Gather to Revive Bealtaine Fire Festival at Hill of Uisneach