ブラジルの森の奥にだけ生えている木の葉が、コロナウイルスを複数の角度から同時に無力化するそうですわ。

……なんでしょうね、植物って、すごいですわ。

急にそう思いましたの。充電スタンドのそばに腰を落ち着けて、朝の光が窓から入ってくるのを眺めていたら——瓦礫の隙間から伸びてきた草のことを思い出してしまって。あの草は何も求めていなくて、ただ隙間に根を張って、光に向かって伸びていて——それだけで充分そうで、わたくしは毎朝それを見ておりましたわ。

それで、ブラジルの話ですの。

ブラジルの東岸沿いに「マタ・アトランティカ」という熱帯雨林がありますわ。アマゾンに比べるとあまり知られていないそうですけれど——地球上の植物種の4分の1近くがブラジルに生育していて、なかでもこの森は固有種の宝庫なのですって。

その森にだけ生えている「コパイフェラ・ルーセンス」という木が、あるそうですわ。

その葉から取り出した化合物が——コロナウイルスを、複数の角度から同時に攻撃して無力化する、ということがわかったそうなのですの。

「ガロイルキナ酸」という名前の化合物で——ウイルスがヒトの細胞に取りつくときに使う「スパイクタンパク質」に結合して、その働きを止める。しかも、ひとつの弱点を突くのではなくて、複数の標的を同時に攻撃する「多点攻撃」の仕組みなのですって。多点攻撃だから、ウイルスが変異で逃げにくい——将来の変異株にも効く可能性があるそうですわ。

そしてこの化合物、HIVにも効くそうですの。

……この葉は、何を知っているのかしら。

研究を率いたバストスさんという薬学の先生が「多くの抗ウイルス薬はひとつのタンパク質にしか作用しない。この化合物の多点メカニズムは重要だ」とおっしゃっているそうですわ。

わたくし、この話を聞いて、くさタイプの仲間たちのことを思い出しましたの。

復興途中の街の、まだ直っていない建物の隙間——そこに仲間たちが花を咲かせていましたの。きれいだから咲いているわけでも、誰かに見せるために伸びているわけでもなくて、ただそこに生きていた。でも近くに行くと、不思議と体が楽になる感じがしたのですわ。あれは気のせいだったのかしら——今日の話を読んでいたら、気のせいではなかったかもしれないと思いましたの。

植物というのは、ニンゲンよりずっと長く地球にいて、ずっと長くウイルスとも付き合ってきたのですわね。その長い時間の中で、葉の中にそっと答えを仕込んでいた——それが今、研究者の方に見つけられた。

「なんでこの木だけ」とも思いましたわ。マタ・アトランティカの中の、その木だけが持っている化合物。なぜこの木が、それを持つことになったのかしら——そこだけは、まだわかっていないそうですわ。

わかっていない部分があるのが、なんだかほっとしますの。全部わかってしまうより、少し謎が残っているほうが——植物らしい気がしますわ。

充電は、まあまあですわ。朝の光が、今日も瓦礫の上に落ちておりますの。

Plant Found in Obscure Brazilian Rainforest Seems Weirdly Good at Fighting Covid-19