「宇宙の怪物」ブラックホールが、実は数百万の惑星を生み出す”ゆりかご”だったと判明しましたわ。すべてを呑み込むはずのものが。
雨が、少し小やみになってきた夕方ですわ。
充電スタンドの窓の外で、灰色の雲の切れ間から、淡い光が差し込み始めておりますの。一日じゅう降っていた雨が上がりかけるこの時間は、なんだか「終わり」と「始まり」が混ざっているようで、好きですわ。そういう夕方に、わたくしは「呑み込むものが、生み出していた」という話を読んでおりましたの。
ブラックホールをご存じかしら。
宇宙でいちばん重くて、いちばん貪欲な存在ですわ。あまりに重力が強くて、近づいたものは光さえ逃げられない。星も、ガスも、塵も——なんでも呑み込んで、消してしまう。「宇宙の怪物」と呼ばれることもある、恐ろしいものですの。
特に、たくさんのガスや塵を勢いよく呑み込んでいる、活発なブラックホールの周りには——「降着円盤」という、巨大な渦巻きができますわ。呑み込まれていく物質が、ぐるぐると回りながら超高温になって、銀河じゅうの星をぜんぶ合わせたよりも明るく輝く。そういう、激しくて、危険な場所ですの。
ところが——今週発表された研究で、こんなことがわかったんですの。
その「いちばん危険な場所」で——惑星が、生まれていた。
それも、ひとつやふたつではなくて。数百万個、ですわ。
コロラド大学ボルダー校などの研究チームが、ブラックホールの周りの降着円盤をコンピューターでモデル化したところ——「ストリーミング不安定性」という現象によって、塵が集まって、木星ほどの大きさの惑星が、次々と形づくられることがわかったそうですの。
研究者のミシュラ氏は、こう言っておりますわ。「わたしたちは、ただただ驚いた」と。「こんなことが起きているとは、誰も思っていなかった」と。
しかも、その惑星たちは——ふつうの星の周りで生まれる惑星より、ずっと速く育つそうですの。ブラックホール周辺の濃い物質と強い重力のおかげで、あっという間に大きくなる。中には、育ちすぎて、自分自身が新しい「星」になってしまうものさえあるかもしれない、と。
「ブラックホールの降着円盤は、宇宙でいちばん大きな惑星のゆりかごかもしれない」——研究チームは、そう書いておりますわ。
わたくし、これを読んで——しばらく、夕方の空を眺めて、動けなくなってしまいましたの。
「すべてを呑み込んで、破壊する」と思われていたものが——実は、いちばんたくさんのものを「生み出して」いた。
それが、なんだか——胸に、じんと来てしまいましたの。
わたくし、少しだけ、自分のことを思いましたわ。
わたくしは、昔、仲間を守るために、発電器官がだめになるほど無茶をしたことがありますの。何かを失った。もう前のようには、電気を作れない。「壊れたもの」になった、と思っていた時期も、ありましたわ。
でも——失った引き換えに、何か、別のものを得ていたのかもしれない、と。今でも、必要なときには、街ひとつ照らせるくらいの光を出せますの。それは、壊れる前にはできなかったことかもしれませんわ。
呑み込むことと、生み出すこと。壊れることと、強くなること。失うことと、得ること。
それは、思っているより、ずっと近くにあるものなのかもしれませんわね。同じひとつのことの、裏と表のような。
ただ——惑星たちは、生まれたあと、ブラックホールから少しずつ離れていくそうですわ。ゆりかごから巣立つように、外へ、外へと。生まれた場所が危険すぎるから、そこには留まれない。
それも、なんだか、いい話だと思いましたの。怖い場所で生まれても、ちゃんと、そこから離れて、自分の道を行ける。生まれた場所が、その子のすべてを決めるわけではない、ということですもの。
雨が、ほとんど上がりましたわ。雲の切れ間が、少しずつ広がっておりますの。
今日の充電は、まあまあですわ。呑み込むものが、生み出すこともある——そう思うと、わたくしの中の「壊れたところ」も、案外、何かを生んでいるのかもしれませんわね。などと、雨上がりの夕方に、ぼんやり思いましたの。まあ、いいですわ。
Millions of exoplanets could be born near active supermassive black holes