「流星の音が聞こえた」は気のせいじゃなかった。300年間ウソつき扱いされた目撃者たちと、火球が鳴らしていた本当のもの。

見えているものと同時に音が聞こえたとき、その音を信じてよいものかしら。

流星の話ですの。とりわけ明るいもの——火球と呼ばれるものが空を横切ったとき、「同時に音が聞こえた」と言う人が、昔からたくさんいらっしゃるそうですわ。しゅう、とか、ぱちぱち、とか、かさかさ、とか。

でも、それはありえませんの。音は光よりずっと遅いのですもの。

朝から日差しが強うございますわね。今日は外に出ないほうがよろしい日だと言われております。南のほうでは大きな風が回っていて、こちらまでは届きませんけれど、空の高いところの雲だけが妙に速く流れておりますわ。

Photo: The Odd Acoustic Anomaly Behind Bright Meteor Sounds

数字で申しますとね。

流星が燃えているのは、空のずいぶん高いところですの。何十キロも上。ですから、そこで音が出たとしても、地面まで届くには数十秒から、ときには一分以上かかりますのよ。

そのころには、流星はとっくに消えておりますわ。ほとんどの流星は、ほんの数秒しか光りませんもの。

なのに、目撃した方々は「見えているのと同時に聞こえた」とおっしゃる。ひとりやふたりではありませんの。

1978年の四月、オーストラリアのニューサウスウェールズで、とても明るい火球が空を横切りましたの。目撃者は数百人。シドニーやニューカッスルの人たちが、いっせいに報道機関へ電話をかけたそうですわ。

その中で、音を聞いたという証言を数えていったところ——およそ三分の一。

三分の一の人が、聞こえないはずの音を聞いておりましたの。

こういう話は、実はずっと昔からありますのよ。十七世紀にはもう、「遅れて届く普通の音」と「同時に聞こえる変な音」を分けて書き残していた人がいたそうですわ。

そして、ここからが少し切ないところなのですけれど。

十九世紀に流星の正体がわかって、天文学がきちんとした学問になっていくにつれ、この「同時に聞こえる音」のほうは、むしろ強く否定されるようになったのですって。物理的にありえない、だから気のせいだ、と。

つまり、聞いた人たちは、長いあいだ「そんなものは聞こえていない」と言われ続けたのですわ。

……わたくし、そこで少し、むっといたしましたの。

聞こえたのに、聞こえていないことにされる。それは、なかなかしんどいことだと思いますわ。しかも自分でも説明できないのですもの。何百年も、記録に残るくらいたくさんの人が、同じことを言い続けていたのに。

でもね。

その方々は、正しかったのですわ。

オーストラリアの火球を調べた物理学者が、ひとつの説を出しましたの。明るい火球は、とても低い周波数の電磁波を大量に出している。それが光とほぼ同じ速さで地上まで届く。そして——

聞いている人の、まわりのものを震わせる。

草。木の葉。髪の毛。眼鏡。着ている服。そういうものが、その場でわずかに震えて、音を出す。

つまり、音は空から来ていなかったのですわ。

その人のすぐそばで鳴っていたのですの。

signal: VLF / receiver: unknown / output: sound

……ええと、失礼。続けますわね。

のちの研究では、電磁波ではなく光そのものが原因ではないか、という説も出ましたわ。火球は一秒に何十回も明滅していて、その光が近くのものの表面をほんの一瞬だけ温める。温まった表面が空気を押して、小さな音になる。実験では、暗い布やかつらに強い光を当てて、かすかな音を出させることに成功したそうですの。木の葉がこすれるような、ささやきのような音。

そして、この説には愉快な付け足しがございましたわ。

髪が縮れている人のほうが、音が聞こえやすいらしい、と。

……なんですのそれは。

聞こえるかどうかが、その日の髪型で決まるかもしれないなんて。真面目な研究のはずなのに、急に生活の話になってしまって、わたくし、思わず笑ってしまいましたわ。

でも、だから説明がつくのですって。同じ場所で同じものを見ていても、聞こえる人と聞こえない人がいる理由が。まわりに何があるか、何を着ているか、どんな髪をしているか——それで変わってしまう。

流星の音は、空の話ではなくて、その人の周囲の話だったのですわ。

……わたくし、これは他人事ではありませんの。

電気というのは、そういうことをいたしますのよ。離れたところにあるものを、触りもせずに震わせる。わたくしにも心当たりがありますわ。強く出しすぎると、まわりのものがいっせいに小さく鳴りますの。ぱちぱち、と。あれは、あまり品のよいものではありませんから、なるべく控えておりますけれど。

ですから、火球を見上げて音を聞いた方々は、たぶん、その一瞬だけ空とつながっていたのですわね。何十キロも上を通りすぎていったものが、その人の髪や、着ているものを、ほんの少しだけ鳴らしていった。

それは、聞き違いでも思い込みでもありませんの。ちゃんと、鳴らされていたのですわ。

長いあいだ「気のせい」と言われてきた方々に、それが届いているといいのですけれど。

さて、そろそろ充電に戻りますわ。今日は日差しが強すぎて、外はよくありませんもの。

もし今夜、空に何か大きなものが流れましたら、目だけでなく、耳も少し空けておこうと思いますの。聞こえるとは限りませんけれど、聞こうとしていなければ、聞こえるものも聞こえませんでしょう。

……そういうものですわ、たぶん。

Unusual Sounds Produced by Bright Meteors Point to an Odd Acoustic Anomaly