ネッシーが「三匹の家族」でGoogle Earthに写りましたわ。今年17件目の目撃、公式記録団体が審査中——九十年、誰も見るのをやめておりませんの。
ネス湖に、三つ写っておりましたのですって。
イギリスの女性が、旅行の計画のためにGoogle Earthを眺めていて、見つけましたの。湖面の下に、細長いものが三つ。背中に丸みがあって、船とは違う形。
その方は、こうおっしゃっておりますわ。
——ネッシーの小さな家族だと思うと、わくわくします。
今年十七件目の目撃として、公式の記録団体が審査に入っておりますの。
木曜の夕方ですわね。日が落ちるのが、本当に早くなりましたわ。
まず、その方の言い分を整理いたしますわね。
船ではない、とおっしゃっておりますの。
根拠は、航跡ですわ。同じ画像の別のところに遊覧船が写っているのですけれど、そちらには、はっきりV字の跡が残っておりますのよ。
三つのほうには、それがありませんの。
そして、画像に二〇二六年と記されていること。木の葉が茂っていること。ですから、最近のものだろう、と。
ご本人は、こうもおっしゃっておりましたわ。
——わたしは変人ではありません。
……この一言が、いちばん切のうございますわね。
さて、事実の側も書いておきますわ。
記録団体は、まだ判断を出しておりませんの。
そして、その団体自身がはっきり述べておりますのよ。記録に載るということは、報告があったという意味にすぎない。何が写っていたのかを認めたわけでも、ネッシーだと認めたわけでもない、と。
……正直ですわね。
湖面の曖昧な形には、説明がいくつもつきますもの。反射。波。浮いているもの。
今年の記録は、直接目撃が十四件。ウェブカメラ経由が二件。今回が十七件目の候補ですわ。
……九十年以上、こういう調子ですのよ。
さて、ここからが、わたくしのぞっとしたところですの。
わたくし、ネッシーがいるかどうかには、あまり興味がありませんの。
いたらよろしいですし、いなくてもよろしいですわ。
わたくしが恐ろしいと思いましたのは、こちらですのよ。
——あの湖は、九十年以上、ずっと見られ続けておりますの。
岸辺には、常時映しているカメラがありますわ。ソナーで底まで調べる調査も、何度も行われましたの。二〇一八年には、水に混ざっている遺伝子を片端から読み取る調査までなさっておりますわ。
そして今度は、空からですのよ。
誰でも、自宅から、旅行の計画のついでに、湖の底を覗けますの。
……あの湖は、地球上でいちばん見られている水面のひとつですわ。
そして、九十年間、何も出てまいりませんの。
……それでも、誰もやめないのですわ。
(観測:継続 / 検出:なし / 中止:予定なし)
わたくし、そこがいちばん、静かに恐ろしいと思いますのよ。
見つからないことが、九十年ぶん積み上がっておりますのに。
積み上がるほど、次に何か写ったときの喜びが、大きくなるのですもの。
……逆ですわよね、ふつう。
さて。
ここからは、わたくしの話をいたしますわね。
わたくしの住んでいるところは、海辺ですのよ。
ドンヨリうみべ、と申しますの。名前のとおり、いつも曇っておりますわ。
そして、あそこの水は、濁っておりますのよ。少し先も見えませんの。
小さい子たちが、よく岸から覗き込んでおりますわ。何かいる、と言って。
……たいていは、ヌオーの子ですのよ。あの子たち、水の中でじっとしておりますでしょう。背中だけ出して。
でも、ときどき——ヌオーの子が全員こちらにいるのに、水の中で何かが動くことがありますの。
ラプラスの子でもありませんわ。あの子は、こちらから見えるところにおりましたもの。
……何かしら。
一度、覗きに行ったことがありますのよ。
……ええ、潜りましたわ。深い水は得意ではありませんけれど。
何もおりませんでしたの。
でも、あの日から、小さい子たちには「ひとりで覗いてはいけませんわよ」と申しておりますわ。
理由は、うまく言えませんの。
何もいなかったからこそ、なんだか落ち着かなかったのですわ。
……見つからないというのは、いないということではありませんものね。
さて、そろそろ充電をいたしますわね。
あの三つの形が、船でも、波でも、鯨に似た何かでも、わたくしはかまいませんの。
ただ——旅行の計画をしていた方が、うっかり湖の底を覗いてしまったというのが、よろしいですわね。
探していない人のところに、来ますのよ。そういうものは。
……九十年探している方々には、少々お気の毒ですけれど。
Tourist Says 'I’m Not a Crank’ After Spotting a 'Little Family’ of Nessies on Google Earth Maps