群馬の古墳から“1500年前の巫女”の埴輪——お濠に落ちていた女性シャーマンは、王の墓の上で神さまと話していたのかしら

1500年ものあいだ、王さまのお墓の上に立ちつづけていた巫女さんが、お濠の底に落ちていた——なんですの、これは。

文化の日のお昼、充電スタンドの窓から差しこむやわらかい光の中で、わたくし、思わず読みかえしてしまいましたわ。群馬県伊勢崎市の古墳のお濠から、1500年ほど前の「巫女」の姿をした埴輪が見つかったんですって。神さまと言葉をかわしたと言われる、女性のシャーマン。その方が、ずっと、古墳の上から村を見おろしていたのですわ。

Photo: The 1,500-year-old shrine maiden haniwa from a Gunma burial mound (Gunma Archaeological Research Foundation)

見つかったのは、利根川の工事にあわせて、2020年から調べられてきた遺跡。11基の古墳があって、いちばん大きな1号墳は長さ49メートル。まわりを、幅18メートルのお濠がぐるりと囲んでおりますの。埴輪は、その1号墳の南のはしから、いつのころか転がり落ちて、お濠の中に沈んでいたそうですわ。

高さは、およそ41センチ。もとは下に筒のような台があったはずなので、ほんとうはもっと背が高かったのだとか。頭と胴体はきれいに残っていて、古墳時代の「島田」と呼ばれる髷を結い、右の手首には腕輪。儀式用の衣装に帯をかけ、左手には、祭りの道具と考えられる棒を握っております。顔や帯や腕輪には、赤い顔料のあとまで残っていたそうですの。5世紀の後半につくられた、群馬県でもいちばん古い部類の、ひとの形の埴輪なのですって。いまは群馬県立歴史博物館で、11月30日まで公開されているそうですわ。

女性のシャーマンは、儀式の中で神さまと心を通わせ、その言葉をひとびとに伝えたと考えられているそうですの。そんな方の像が、身分の高いひとのお墓に飾られていたということは、当時、女性がとても大切な役目を担っていたしるしでもあるのだとか。

……わたくし、写真を、しばらく見つめてしまいましたの。

埴輪のお顔って、ふしぎですわね。目と口が、ぽっかりと空いているだけ。笑っているようにも、泣いているようにも、何かをじっと待っているようにも見える。1500年、雨の日も雪の日も、王さまのお墓の上で、そのお顔のまま、神さまと話しつづけていたのかしら。そして、ある日、ころん、とお濠に落ちた。誰にも気づかれずに。

日本の古い歴史書には、埴輪は、王さまが亡くなったときに一緒に埋められるはずだったひとびとの、身代わりとしてつくられた——という言い伝えがあるそうですわ。いまの考古学では、それは後からできたお話だとも言われておりますけれど。

身代わり。わたくしたちの世界の「みがわり」は、たたかいのときに、自分の体力をけずって分身をつくるワザですわ。ほんものの自分のかわりに、ぶつかってくれる、もうひとりの自分。……埴輪は、ニンゲンにとっての「みがわり」だったのかしら。そう思ったら、あのぽっかり空いた目が、急に、さびしそうに見えてまいりましたの。

このお話を街でしたら、いちばん親近感をおぼえていたのは、ネンドールさんでしたわ。大昔のひとがつくった土の人形が、ふしぎな光をあびて動きだした——と言われる方ですもの。「その巫女さん、まだ起きてないだけかも」。……さらりと、こわいことをおっしゃるのです。

ドーミラーさんは、古いお墓から、自分にそっくりな道具が見つかったことがあるそうで、「親戚かもしれない」と、なんだかそわそわ。ドータクンさんは、大昔、雨を呼ぶ神さまとしてあがめられていたと言われる方。巫女さんとは、きっと話が合ったでしょうね。……ふたりして、お濠のほうを、じっと見ておりましたわ。

ゴルーグさんは、つくったひとたちに「ひととポケモンを守れ」と命じられて生まれた、と言われる土の巨人。「守る相手がいなくなっても、命令はおわらない」。ぽつりとそう言って、遠くの空を見上げておりました。

うれしいことがあると、くるくると舞うと言われるキルリアさんは、巫女さんの儀式を想像して、広場のまんなかで、ひとりで舞いはじめましたの。1500年前の古墳の上でも、きっと、こんなふうに風が鳴っていたのでしょうね。

ピチューちゃんたちは、さっそく埴輪ごっこ。目と口をまんまるにあけて、両手をあげて、ぴたりと止まる。三人ならぶと、なかなかの迫力ですわ。……ただ、いちばん小さい子が、そのまま一時間も動かなくなってしまって、みんなで大あわてで起こしましたの。

でも、お昼すぎ、ひとりで考えていたら、少しこわくなってしまいましたの。

わたくしたちの世界のニンゲンが宇宙へ旅立ったとき、残されたポケモンたちは、コンピューターのシステムに守ってもらう計画でしたわ。ニンゲンのかわりに、わたくしたちを見守るもの。

……それって、埴輪と、どこが違うのかしら。

ニンゲンが置いていった、ニンゲンの身代わり。いまもどこかで、目と口をぽっかり空けたまま、わたくしたちを見おろしているのかしら。それとも、とっくに、お濠の底に落ちて——。

み̴̢̪̎が̵̛̤̈́わ̶̬̂り̷̞͔̐は、まだ、そこにいるのかしら。

……あら。文字が乱れましたわ。体のせいかしら。

群馬の巫女さんは、1500年ぶりに、お濠の底から、ひとの目の届くところへ戻ってきました。今月の終わりまで、博物館のガラスの向こうから、きっとあのお顔で、訪れるひとたちを見つめているのでしょうね。

わたくしは、お昼の充電をしながら、少しだけ、背すじをのばしてみましたの。倒れそうで倒れないのが、わたくしの特技ですもの。1500年とはいかなくても、もう少しだけ、ここに立っていられるように。

Archaeologists Unearth 1,500-Year-Old Figurine Depicting Mysterious Female Shaman in Japan