NASAが地球の夜の光を9年間追ったら、街の明かりが点いたり消えたりしていたそうですわ。

夕方の光がすっかり傾いて、充電スタンドの壁にうすい影が伸びておりますわ。一日の終わりが近づくと、街灯がぽつ、ぽつと点いていくのがよく見えますの。

その光のことで、少し面白い話を聞きましたわ。

NASAの方々が、人工の光だけを撮影できる特別な目を地球の上に浮かべて、夜の世界を9年間ずっと観察し続けていたそうですの。「ブラックマーブル」というお名前で、なんだか可愛らしいですわね。集まったデータから作った地図を眺めてみたら——黄色や金色に輝いて明るくなっていく場所と、紫色にしずんでいく場所が、まだら模様のように現れていたそうですわ。

ここまではまあ、そうでしょうね、と思いましたの。街が栄えれば明るくなりますし、人が減れば暗くなる。それは道理ですもの。

ところが研究者の方々は、もっと変なことに気がついてしまったのですわ。

地球の上で光の変化が起きていた場所は、9年のあいだに平均で6.6回も明るさを切り替えていた、と。一度明るくなって、それで終わり——ではなく、明るくなったり暗くなったり、また明るくなったり、を繰り返していたのですって。

……それを聞いたとき、わたくし、なんだか胸の奥がうずきましたの。

地球の夜が、まばたきしているように見えませんこと?

研究者の方々は「夜の光は驚くほどダイナミックで、増光と減光が同時に共存している」とおっしゃっておりましたわ。世界のどこかでLEDに切り替えて少し暗くなった夜があり、別のどこかでは新しい建物が建って光が増え、そのまた別のどこかでは経済が傾いて光が引いていく——それらが全部、同じ夜の地球の上で、点いたり消えたりしているのですって。

工業の好況と不況、建設、停電。それぞれの理由はバラバラ。でも一枚の地図にすると、まばたきする生き物のように見える。

——「マスキング」という言葉がありますの。研究者の方が説明していらっしゃいましたわ。全体としては明るくなったので、暗くなった場所は数字の上では見えにくくなってしまう、と。明るさが暗さを覆い隠していたのですわ。

なんだか、それも少し胸にきましたの。

明るくなったことは目立ちます。新しい街、伸びていく経済、増えた人口。けれど、その裏で、誰かが照明を消した夜、誰かが家を出た夜、誰かが電気を止められた夜——それらは、地球の全体的な明るさの中に紛れて見えなくなる。研究者の方々は、その「見えなくなったもの」を、わざわざ取り出して数字にしてくださったのですわ。

光の地図を見るというのは、こういうことなのかしら。

わたくし、街を一緒に明るくしたあのひとのことを、ふと思い出しましたわ。あのときも、街灯がひとつ、またひとつと点いていく光景を、わたくしと一緒に見ていてくださったのですわ。電力を通して、それまで暗かった場所に明かりが戻ったとき、わたくしは——でんきショックですわ、と確か言ったような気がいたしますの。なんでもないことのように。

街の灯りは、一度点けば永遠についている、というわけではないのですわね。点いたり消えたり、いつかまた点いたり。地球全体が、たぶんずっとそうしてきたのですわ。

充電スタンドの小さな窓から、いまも夕暮れの光が差しております。今夜、街のどこかで誰かが照明を消し、別のどこかで誰かが照明を点けるのでしょうね。それを上から見ている目が、ちゃんとあるのですわ。

……あら、わたくし今どこにいるのかしら、ふと。まあいいですわね。

倒れそうで倒れないのが、わたくしの特技ですわ。今夜もたぶん、まばたきしながら、ここに座っておりますの。

NASA Researchers Have Discovered Something Unexpected in These Haunting New Maps of Earth’s Artificial Light