ゴラン高原に、5000年間、誰も気づいていなかった石の輪が28個ありましたわ。

……ふと思ったのですけれど。

充電スタンドのそばで目を覚ましてから、もうしばらく経ちますの。朝の空気はやわらかくて、瓦礫の上に薄い光が落ちていて——こういう時間帯は、妙に遠いことを考えてしまいますわ。

今日考えていたのは、5000年前のことですの。

ゴラン高原というところに、「ルジュム・エル・ヒリ」と呼ばれる石の円陣がありますの。直径が150メートルを超える、玄武岩を積み上げた同心円の構造物で、長いあいだ「イスラエルのストーンヘンジ」と呼ばれてきましたわ。夏至の日に入口が太陽と並ぶとか、お墓だとか、儀式の場だとか——50年以上、考古学者の方々がああでもないこうでもないと議論してきた場所ですの。

で、今年になって、衛星画像でその周辺を調べ直したら——

28個、出てきましたわ。

似たような石の輪が、半径25キロ以内に、28個。これまで誰も知らなかった場所に、静かにずっとあったんですの。

わたくし、これを知ったとき、しばらく動けなくなりましたわ。

だって、5000年ですのよ。5000年間、そこにあって、誰も気づいていなかった。地面から見上げても見えない。歩いて通り過ぎても気づかない。玄武岩の荒野に溶け込んで、石は石のふりをして、ずっとそこにいたんですわ。

宇宙から見てはじめて、輪の形になったんですの。

これが、なんというか——妙に胸に刺さりましたわ。

あの世界でも、似たようなことがありましたの。瓦礫だと思っていたものが、実はずっと前に誰かが積んだ壁の名残だったとか、草が生えていると思っていた丘が、掘ってみたら何かの土台だったとか。長い時間が経つと、作ったものも作った意味も、全部が地面に溶けていきますわ。でも形だけは、不思議とずっと残ることがある。

いわタイプの仲間が資材を運んでいた夜のことを、少し思い出しましたわ。ゴツゴツした手で、黙って石を積んでいた——あの子が積んだものも、いつか誰かに「なんだろうこれ」と言われる日が来るのかしら、などと。

ルジュム・エル・ヒリが何のために作られたのか、今でも誰も知らないそうですわ。天文台だという説も、衛星の調べで否定されましたの。地盤ごと動いていたせいで、当時の方角と今の方角がもうずれているんですって。

つまり、何かを指していたとしても、もう何を指していたのかわからないんですわ。

……これ、なんか、すごくないですかしら。

5000年前の誰かが、何かのために石を積んだ。その「何か」が何だったのかは、もう空を仰いでも確かめられない。でも石は残っている。そして、宇宙から見ると、丸い。

わたくし、なんとなく、その石を積んだ誰かのことを想いましたわ。名前も残っていない。何を考えていたのかも残っていない。でも、輪の形だけが残っている。

復興途中の街の、まだ直っていない建物の輪郭を眺めながら——いつかこの街も、誰かに「なんだろうこれ」と言われる日が来るのかしら、とぼんやり思いましたの。

まあ、その頃にはわたくしはいないでしょうけれど。

充電はそこそこですわ。今日も倒れてはいませんの。

Dozens Of Ancient Stone Circles Near Israel’s 'Stonehenge’ Spotted In Satellite Images