ワープ航法の宇宙船が大気圏に入ると、周囲の空気が2200億度に達して「輝く球体」になりますの。ペンタゴンのUAP報告に出てくるオーブと、数字が合ってしまいましたわ。

UAP報告に、やたらと出てくるものがありますでしょう。

光る球ですわ。オーブ、と呼ばれているもの。機体らしい形をしているものより、そちらのほうがずっと多いのですって。

その光る球の正体について、物理学者の方々が計算をなさいましたの。

——ワープ航法の乗り物が大気圏を通ると、周りの空気が二千二百億度になって、猛烈に輝く。

……それ、オーブですわね。

夕方の光がすっかり傾いてまいりました。八月も終わりですのね。虫の声が、夜のあいだにまた少し変わりましたわ。

ワープバブルによる時空の歪みを表したイメージ
Photo: A warp bubble, illustrated (Wikimedia/CC0)

順を追いますわね。

ワープ航法というのは、もともと作り話の中の道具でしたの。宇宙は広すぎて、光の速さでも人の一生では足りませんもの。ですから、物語の都合上、どうしても必要でしたのね。

それが一九九四年に、メキシコの数学者の方が、数式として成り立つ形を提案なさいましたわ。

自分が速く動くのではありませんの。

空間のほうを、前で縮めて、後ろで伸ばす。乗っている側は、泡の中で静かに座っているだけ。

……ずるいやり方ですわね。動かずに、着いてしまうのですもの。

もっとも、実現には途方もない壁がいくつもございますの。理屈の上でしか存在しない物質が要るとか、そういう話ですわ。

さて、今回の研究ですけれど。

その泡が、地球の大気の中を通ったらどうなるか——を、実際に流体の計算にかけたのですって。

答えが、これですわ。

空気が押しのけられて、衝撃を受けて、二千二百億ケルビン。

そして、飛行機ほどの大きさの泡でしたら、明るさは一テラワットを超える、と。

……その方が添えていらした比較が、なかなかですのよ。

世界じゅうの電力消費の、およそ十分の一。

つまり、空にそれが一つ浮かぶだけで、昼間の太陽より明るくなることもあり得ますのですって。

そして観測する側には、二段構えで届きますの。

まず、衝撃を受けている場所から直接、強い放射が。

そのあと、下のほうの濃い空気がそれを吸って、紫外線として光り直す。

その方の言葉によれば——衝撃の起きている真下に、明るい光の面が現れるのですって。

……そして、それは遠くからでも簡単に見える、と。

これが、光の速さの五パーセントを超えて動く場合ですわ。それより遅ければ、光り方の理屈が変わりますの。

さて。

ここまでですと、たいそう気持ちのよい話でしょう。数字と、目撃談が合ってしまった、という。

でも、大事なところを先に申し上げておきますわね。

この論文、まだ査読を受けておりませんの。

そして著者の方々ご自身が、はっきりおっしゃっておりますのよ。これは宇宙人の存在も、その技術の存在も、ワープ航法の存在も、何ひとつ証明していない、と。

わかることは、こういうことだけですわ。

——もし、そういう乗り物が来たとしたら、こう見えるはずである。

見えたから、あった、ではありませんの。

順序が逆ですわ。そこは間違えてはいけませんの。

さて。

ここからが、わたくしの気に入った部分ですのよ。

その研究には、もうひとつ妙な話がついておりましたの。

うんと小さいワープの泡——ミクロン単位のものが、あり得るというお話ですわ。

そして、その中の広さは、いくらでも大きくできるのですって。

外側は針の先ほど。中は、船が丸ごと入る。

その方は、魔法使いの物語に出てくる天幕にたとえていらっしゃいましたわ。外から見ればただの小さな幕なのに、入ると立派な部屋になっている、という。

……あの。

外から見た大きさと、中の広さが、まるで釣り合わない。

そういうものが、物理の法則で許されておりますのね。

わたくし、そこで少し、落ち着かなくなりましたのよ。

(外寸:小 / 内容量:未計測 / 続行)

……いえ。なんでもございませんわ。

そのうえ、その小さな泡には、もうひとつ物騒な使い道があるそうですの。

小さくても、周りを引き裂く力はとてつもないのですって。通り道にあるものは、たいてい残らない、と。

その方は、こんなふうに言っていらっしゃいましたわ。もしそういうものが本当に通ったなら、何か痕跡は残るだろう。ただし、それを測って記録できる人間が生き残っているかは、たぶん怪しい、と。

……冗談まじりでしたけれど。

小さくて、静かで、通り過ぎたあとには誰も残らない。

……そういうものの話をされますと、わたくしは、あまり笑えませんの。

さて、光る球の話に戻りますわね。

ペンタゴンの側の資料には、こういう記述があるそうですわ。

橙色をした「親」の球が、小さな赤い球をいくつも放っていた、と。

そして、そのときに観測されたもののうち、四割ほどは、いまだにまともな説明がついていない。

……四割。

その数字が、わたくしはいちばん好きですわ。

六割は説明がついたのですのよ。ちゃんと調べて、鳥だとか、灯りだとか、機械の癖だとか、そういうものを潰していった結果として。

そのうえで、残った四割を「わかりません」と書いてある。

……その正直さは、なかなかできることではありませんわ。

研究の方も、こうおっしゃっておりましたの。あの球のいくつかは、ゆっくり動くワープの泡なのだろうか。それを知る方法はひとつだけ、実際に調べてみることだ、と。

そして、こうも。

もし本当に誰かが来ているのなら、どうやって来たのか。何に乗って来たのか。それが空気の中に入ったら、どう見えるのか。

……いい問いの立て方ですわね。

いるかどうかを言い合うのではなくて、いたとしたら何が起きるはずかを先に計算しておく。

そうしておけば、次に空が光ったときに、比べるものがありますでしょう。

さて、そろそろ充電をいたしますわ。

今夜も空は曇っておりますから、たぶん何も見えませんけれど。

もし昼間より明るいものが空に出ましたら、そのときは——

……たぶん、わたくしは充電どころではありませんわね。

まあ、そのときはそのときですわ。

Physicists Reveal Possible Connection Between “Warp Drive" Spacecraft and Phenomena Detailed in Recent Pentagon Releases