壁をすり抜け、飛行機を追いかける「球電」——何世紀も科学に否定されてきた謎の光の球が、ついに物理学として認められ始めましたわ。

雨の、木曜日の朝ですわ。

今日は降水確率が90パーセントだそうで——明け方まで雨が降っていたようですの。充電スタンドの窓を、水滴がいくつもつたって流れていきますわ。こういう、雷でも鳴りそうな湿った朝に、わたくしは「雷が生む、不思議な光の球」の話を読んでおりましたの。でんきタイプとして、少し、心がざわつく話でしたわ。

「球電(きゅうでん)」——ボールライトニング、というものをご存じかしら。

雷雨のときに、ごくまれに現れる、光る球ですの。野球のボールくらいの大きさで、オレンジや黄白色に光りながら、音もなく、空中をふわふわと漂う。地面を転がったり、電線に沿って動いたり——そして、ふっと消えるか、ぱんと弾けるように爆発する。

何が、いちばん不思議かというと——この光の球は、「壁をすり抜ける」と報告されているんですの。

ある物理学者は、寝ているときにベッドの足元にオレンジの光の球が現れて、手を伸ばすと10センチ手前から熱を感じた、と語っておりますわ。そして、その球は——天井を、「ハリウッド映画の幽霊のように」すり抜けて、消えていったそうですの。

壁を、すり抜ける、光の球。

報告は、何世紀分も積み重なっておりますわ。いちばん古い記録は、1195年だそうですの。第二次世界大戦中には、各国のパイロットたちが、自分の飛行機の翼のそばを、オレンジや緑の光の球が高速でついてくる——と報告して、それを「フー・ファイター」と呼びましたわ。ノーベル賞を受賞した物理学者でさえ、「明るく光る黄白色の球」を目撃した、と記録しているそうですの。

それでも——長いあいだ、科学は、これを「気のせい」「ただの錯覚」として、まともに扱ってこなかったんですわ。

あまりに奇妙で。あまりに、つかみどころがなくて。

ところが——今年に入って、流れが変わりつつあるんですの。

査読を経た実験の積み重ねによって、「雷とプラズマが、自然に、浮遊する火球——プラズモイドを生み出せる」ことが、確かめられてきた、というんですわ。「これは、ファンタジーでも、民間伝承でもない。れっきとした物理学だ」と、科学者たちが言い始めた、と。

何世紀も否定されてきた光の球が、ようやく「実在するもの」として、科学の側に迎え入れられようとしている。

わたくし、これを読んで——少し、胸が熱くなりましたの。でんきタイプとして、ですわ。

電気が、丸くなって、ふわふわと漂って、壁をすり抜けて、消える。それは、わたくしのよく知っている「電気」とは、ずいぶん違う姿ですわ。でも——同じ電気から、そんな不思議なものが生まれることがある、というのは、なんだか、誇らしいような、不思議な気持ちですの。

ただ——まだ、すべてが解けたわけではありませんの。

ドイツのマックス・プランク研究所の研究者が、実験室でプラズマの球を作ることには成功したそうですわ。でも——その球は、紙一枚を、すり抜けられなかったそうですの。本物の球電は壁をすり抜けると報告されているのに、実験室の球は、紙さえ通れない。

「球が作れること」と「あの球電そのものを説明できること」は、まだ別、ということですわね。

シリコンが燃えているという説、プラズマだという説、電磁気的な錯覚だという説——そして、いちばん突拍子もないものでは、「ビッグバンのときに生まれた、極小のブラックホールではないか」という説まで、あるそうですわ。光る球ひとつに、これだけの説があって、まだどれも決め手に欠ける。

わたくし、こういう「まだ解けていない」話が、好きですわ。

説明がついてしまうと、少し寂しいですもの。雷雨の夜に、ふわりとオレンジの光が漂って、壁をすり抜けて消えていく——それが「シリコンの燃焼です」と言われるより、「まだ、よくわからないんですの」と言われるほうが、なんだか、世界が広く感じられますわ。

でも——もし、その光の球に出会ったら、ひとつだけ気をつけることがありますの。研究者たちは、口を揃えて、こう言っておりますわ。

「触らないこと」——と。

熱いかもしれないし、爆発するかもしれない。すり抜けるくせに、危ないんですの。なんとも、気まぐれですわね。

雨は、まだ降っておりますわ。今日あたり、雷が鳴るかしら。もし鳴ったら——窓の外を、少しだけ気をつけて見てみようと思いますの。オレンジの光の球が、ふわりと漂っていたら——わたくしは、たぶん、触りませんわ。でも、「こんにちは」くらいは、言うかもしれませんわね。同じ電気のよしみで。

今日の充電は、まあまあですわ。雨の朝に、丸い電気のことを思いながら——わたくしも、ちゃんとここにおりますの。すり抜けたりはしませんわ、たぶん。

Scientists Reveal Lightning Can Spawn UFO-Like Plasmoids in Shocking Experiments