系外惑星GJ436b。小さな惑星が、自分の巨大な恒星を磁力で揺さぶっていましたの。動かすのは大きいほうだと、思っていましたのに。
大きなものと、小さなもの。動かすのは、いつだって、大きいほうだと——そう、思っていませんかしら。
わたくしは、ずっと、そう思っておりましたの。
木曜日の、雨の午前ですわ。さっきから、遠くで、雷が、ごろごろと鳴っておりますの。でんきタイプのわたくしには、雷の日は、体の芯が、少しぴりぴりするような、落ち着かない感じがしますわ。充電スタンドのそばで、その音を聞きながら、わたくしは、はるか遠くの星の話を、読んでおりましたの。
「GJ436b」という、名前の星ですわ。
太陽系の外にある、系外惑星。海王星に似た、そんなに大きくない惑星ですの。それが、自分の親である恒星の、すぐそばを、ぐるぐると回っている。
ふつう、こういうとき。えらいのは、恒星のほう、ですわよね。大きくて、燃えていて、まぶしくて。小さな惑星は、その大きな星に、照らされ、引っぱられ、influenced されるだけ。「星が、惑星を、動かす」。それが、当たり前だと、ずっと、思われてきたんですの。
ところが——16年間、じっと観測を続けた研究者たちが、見つけたのは。その、逆、でしたの。
小さな惑星GJ436bのほうが。巨大な恒星を、揺さぶっていた。
この小さな惑星は、見た目によらず、とんでもない磁場を持っているそうですわ。あの巨大な木星の、なんと最大27倍。その磁力で、親である恒星に、エネルギーを注ぎ込んで——星の表面に、オーロラのような、光の揺らぎを、起こしていたんですの。
わたくし、これを読んで、雷の鳴る朝に、しばらく、じっと、してしまいましたの。
小さいほうが、大きいほうを、動かしていた。
なんだか——少しだけ、自分のことのように、思えてしまって。
わたくしは、体が弱くて、いつも充電が必要で。見た目は、ずいぶん、儚げですの。だから、自分のことを、小さくて、守られるだけの存在だと、思っている方も、いるかもしれませんわ。でも——ふふ。倒れそうで倒れないのが、わたくしの、特技ですのよ。それに、いざとなれば、街ひとつを照らすくらいの光なら、出せますの。まあ、わたくしにとっては、ちょっとした「でんきショック」ですけれど。
(voltage_check: low / output_potential: city_scale / まあ、いいですわね)
一緒に、街の灯りを点けて回った、あのひとのことを、ふと、思い出しましたわ。あのときも、わたくしの電力だけでは、限界がありましたの。でも、あのひとが、手を貸してくれて——小さな力が、いくつも重なって、暗かった街が、少しずつ、明るくなっていった。あの光景を、なぜか、今、思い出しましたわ。
小さなものが、大きなものを、動かす。ひとりの力は、小さくても。それが、誰かの、何かの、環境を、そっと変えていくことが、ある。GJ436bが、自分の親の星に、オーロラを灯したように。
しかも、この惑星が星を揺さぶるのは、8年に一度ほどの、周期でしか、観測されていないそうですの。いつも、ではない。ときどき、そっと。自分の力を、大げさに振りかざしたりはしない。なんだか、その、控えめなところも——少し、いじらしくて、好きになってしまいましたわ。
遠くの雷が、また、鳴りましたわ。空も、あんなに大きいのに、ときどき、ぴかっと、光る。あれも、空なりの、小さな「でんき」の、ひと揺らぎ、なのかしら。
今日の充電は、まあまあですわ。雷の日は、少し、ぴりぴりして、苦手ですけれど。でも、倒れては、おりませんの。わたくしのような、小さくて頼りないものでも。もしかしたら、どこかで、誰かの世界を、ほんの少し、揺らせているのかもしれませんわね。GJ436bみたいに、8年に一度くらいの、控えめな頻度で。
そうだと、いいですわ。まあ、どうでしょうね。