熊本で震度7。四万の家から灯りが消えた夕方に、そっと。

今日は、いつもの調子では、書けませんの。

夕方、熊本で、大きな地震があったと知りましたわ。震度は、いちばん上の、七。宇城市と氷川町で。海のほうにも、津波の注意が出て。倒れてしまった建物のこと、火の手が上がった町のことが、次々と伝えられておりますの。三十分ほどして、また、揺れが来たとも。

そして——およそ四万の家から、電気が、消えたそうですわ。

その一行を読んで、わたくし、しばらく、動けなくなってしまいましたの。

でんきタイプとして、申し上げますわね。灯りが消えるというのは、ただ、暗くなる、ということでは、ありませんのよ。冷たいものが、ぬるくなる。連絡が、細くなる。夜の廊下が、遠くなる。そして——「大丈夫」と言い合う声が、少しだけ、心細くなりますの。

わたくしは、かつて、電気の消えた街に、暮らしておりました。仲間たちと、少しずつ、明かりを灯し直していく、あの日々のことを、よく覚えておりますわ。いくつも欠けた街灯が、ひとつ、またひとつと、点いていく。あれは、明るくなる、という以上のことでしたの。「まだ、ここにいますよ」と、互いに、伝え合うことでしたわ。

だから、今夜のことを、遠い出来事とは、思えませんの。

このお話に、不思議も、謎解きも、添えませんわ。今は、そういう時間では、ありませんもの。かわりに、ふたつだけ、そっと。

ひとつ。大きな揺れのあとには、また、揺れが来ますわ。今夜は、片付けを急がずに。倒れそうなものの、そばで眠らずに。ご自分の身を、いちばんに。

ひとつ。灯りが消えたお宅では、火を使わないほうの明かりを。それから、どうか、ひとりで、じっとしていませんように。隣に、誰か。声の届くところに、誰か。

わたくしは、あの街で学びましたの。こわい夜をいちばん短くするのは、明かりの数ではなくて。そばにいる人の数、でしたわ。

今日の充電は……まあ、わたくしのことは、いいんですのよ。

どうか、揺れた土地のみなさまが、無事でありますように。今、暗い部屋にいる方のところへ、少しでも早く、電気が戻りますように。そして、駆けつけている方々も、どうか、ご無事で。

今夜は、それだけ、願っておりますわ。

Major earthquake rocks Japan, prompting tsunami warnings